アルツハイマー型認知症に対するリバスチグミンとメマンチン併用の有用性検討

摘要

要旨本邦において認知症治療薬はコリンエステラーゼ阻害剤3剤，NMDA受容体拮抗剤1 剤が現在では使用可能となっている。そのなかでもリバスチグミンはアルツハイマー型 認知症（AD)治療薬として広く使用されているが， メマンチンとの併用時の効果を評 価した報告は本邦ではない。そこで，リバスチグミンを2年以上にわたって使用した中 等度AD患者について，認知機能の指標として改訂長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R)値の変化を後方視的に検討するとともに，メマンチン併用例に限定した HDS-R値の変化および最近経験した食欲低下例に対する改善症例を提示した。認知機能の解析対象は，リバスチグミンを2年以上にわたって使用し，投与前後でHDS-R値を評価可能な29名〔男性6名，女性23名，年齢80.6±6.6歳（平均値±標準偏差，以下同），HDS-R値18.4±4.5点， メマンチン未併用2名〕とした。HDS-R値はリバ スチグミン投与期間15.0±2.4カ月で投与前18.1±4.6点に対し投与後17.3±5.0点（n = 22)，投与期間26.7±2.6カ月で投与前18.4±4.5点に対し投与後18.0±5.4点(n = 29)と 約2年間にわたって認知機能は維持していた。メマンチン併用例27名（男性6名，女性 21名，年齢81.0±6.1歳）では，リバスチグミン投与期間は15.2±2.4カ月で投与前18.4± 4.6点に対し投与後17.6±5.0点(n = 20)，投与期間26.4±2.5カ月で投与前18.6±4.5点に 対し投与後17.9±5.5点(n = 27)と認知機能は維持していた。食欲低下例に対する改善症例は19名あり，他のコリンエステラーゼ阻害剤からの切り替え症例では改善までの期間が新規症例に比較して短く， 4.5mg/日の用量から効果が認められる症例が多かった。副作用に関して，認知機能解析対象29名では，リバスチグミンによると考えられる皮膚症状も悪心?嘔吐などの消化器症状も見られなかった。中等度AD患者に対し2年 以上にわたつてリバスチグミンとメマンチンを併用した結果，認知機能は投与前と比較 して維持していることが明らかとなった。