同種造血幹細胞移植後の移植免疫，腫瘍免疫-日常診療からのQuestion-

摘要

同種造血幹細胞移植後には免疫学的再構築が生じるが， この免疫回復過程は複雑である。免疫担当細胞ごとに異なる過程をとり，患者は好中球減少，細胞性免疫低下， 液性免疫低下，貪食能低下などの様々な要素が混在した複雑な免疫抑制状態を呈する。移植片対宿主病（graft-versus-hostdisease: GVHD)の発症は，この過程を修飾する。そして，このGVHDと移植片対白血病（graft-versus-leukemia: GVL)効果は表裏一体の関係である。さらに， 免疫抑制状態に起因するさまざまな感染症が発症する。同種造血幹細胞移植の日常診療は，免疫状態の結果として生じるGVHD,再発，そしてさまざまな感染症との闘いである。免疫機能は様々な方法で評価可能となってきており，患者の免疫状態の把握は重要であるが，日常診療においてその解釈は難しい。同種造血幹細胞移植後の免疫状態の把握において生じるさまざまな疑問のなかから，本稿では，GVHDとGVL効果，GVHDが免疫学的再構築に与える影響，移植後免疫回復と感染症について考えてみたい。