原発性肺癌に対する肺全摘症例の検討

摘要

肺全摘術は大きな機能的負担を伴う術式であり，また進行病期の癌治療として行われる場合が多いことから，その適応につては慎重な判断が求められる術式である．当院における肺全摘術施行症例について検討した．【方法】2000年1月から2014年12月までに当院で原発性肺癌に対し施行した肺全摘術69例を対象とし治療成績を評価した．【結果】男性55例，女性14例で，平均年齢は64.3（46-84）歳であった．術側は右側19例，左側50例であった．隣接臓器合併切除は18例[心膜14例，心房3例，胸壁3例]，気管分岐部形成が1例に行われていた．術前化学/放射線療法は14例に行われていた．組織型は腺癌24例，扁平上皮癌38例，その他7例．病理病期はIA：4例，IB：9例，IIA：10例，IIB：9例，IIIA：35例，IIIB：2例でIII期以上が37例（53.6％）であった．在院死亡を2例（2.9％）に認めた．5年前生存率は全体で46.1％．病期別ではIA：100％，IB：70.0％，IIA：78.7％，IIB：41.5％，IIIA：28.4％，IIIB：0％，術後観察期間は41.0か月であった．disease-specific survivalはIA：100％，IB：70.0％，IIA：78.7％，IIB：41.5％，IIIA：30.7％，IIIB：0％であった．またIIIA期扁平上皮癌?腺癌はそれぞれ37.8％，19.0％であった．他病死を2例に認めた（呼吸不全：1例，間質性肺炎：1例）．【結語】当院における肺全摘術の治療成績は，在院死亡率2.9％，5年全生存率（全体）46.1％と許容しうるものであった．術前の耐術能に対する十分な評価が必要と考えられた．