コドンに隠された暗号-喚覚受容体のアミノ酸コード領域に埋め込まれた転写抑制機能

摘要

嗅覚受容体をコードする遺伝子はマウスで約1300個あるが，嗅覚ニューロンはそのうちひとつしか発現しない．嗅覚受容体遺伝子におけるその制御機横は,当然ながら，アミノ酸をコードしていない領域にあるものと考えられてきた．たとえば，マウスの第14染色体の日工ンハンサー領域と第9染色体の嗅覚受容体遺伝子プロモーター領域とは,DNAがほとhど隣どうしに接触していることが報告された．染色体のある領域が，ひとつの嗅覚受容体遺伝子プロモーター領域に物理的に接触することによって，ある嗅覚ニューロンではひとつの嗅覚受容体遺伝子のみが発現すると提唱されたのである（Merriam，L.C．，Chess，A．:Cell，131，844－846，2007）．ところが，Hエンハンサー領域のノックアウトマウスでは，この領域の直接の下流にある嗅覚受容体遺伝子の発現は消失したが，ゲノムのそのほかの領域に存在する嗅覚受容体遺伝子の特異的な発現には異常がみられなかった．そこで，新たな制御機構として,嗅覚受容体遺伝子のアミノ酸をコードする領域において発現制御が行なわれていることが見いだされた．