河童随筆(19)〈対照試験〉

摘要

間中喜雄(1911?1989)まなかよしお。知愚庵(ちぐあh)と号す。京都帝大医学部を卒後、順天堂病院などを経て、昭和12年に、小田原にて開業。東洋医学、とくに铖灸に造詣が深く、日本医師会最高優功賞を授与された。特筆すべきは語学の才で、中国語からフランス語までを操り、天才的と称された。『漢方の臨床』創刊時の発行同人のお一人で、掲載された痴愚庵シリーズの洒脱な語り口は、ことに愛読者が多かった。実験には必ず対照試験をやっておかなければならない。こもつとも。薬をのhで効いたといっても、自然に治った場合と比較 しなければ、自然治癒かも知れない。ごもつとも。そのくすりが偽薬(フラシーボ)でもよく効くことがあるから、暗示で効いたのでないという証明もしなければいけない。ごもつとも。医者がよく効く薬だという信念を持って薬をやると、その信念が患者に影響する。だから薬を患者に与えるのに、今なにを与えているのか判らないようにして、効果を観察しなければ駄目だ(二重盲検試験)。ごもっとも。これだけやかましく云うなら、大学病院で偉い先生に治療してもらったというのも立派な暗示だから、ついでに、黒覆面をした医者だかニセ医者だか判らない奴に治療してもらつて、その効果を観察してもらいたい。ごもつとも。純粋に暗示だけ、例えば催眠術だけで、病気がどのくらい治るかも勘定に入れてもらいたい。ごもっとも。