化学療法の経過中に血小板減少を伴うE型肝炎を発症し，肝炎治癒後のNivolumab治療により重篤な血小板減少症を併発した進行胃癌の1例

摘要

緒言：抗癌剤やステロイドホルモンを投与され免疫抑制状態にあると思われた進行胃癌の患者が，血小板減少を伴うE型肝炎を発症した.E型肝炎は対症療法により軽快し，肝機能の改善に伴い血小板数は正常に復したが，その後のNivolumab治療により重篤な血小板減少症を併発し，消化管出血により死亡した示唆に富む症例を経験したので提示する. 症例：73歳男性.無職.E型肝炎発症日（day 0)の約11力月前の人間ドック上部消化管造影検査にて異常を指摘され，精査の結果進行胃癌+肝転移と診断された.既往歴に特記事項なし.肝炎発症日の-42週から-13週までの間にオテラシルカリウム配合剤+シスプ ラチン(S-1 + CDDP)の化学療法を5クール受けたが， PD (Progressive Disease)であった.-43日からはパクリタキセル（PTX) +ラムシルマブ（RAM)療法を受けたが(Fig. 1),薬剤性間質性肺炎を発症したため中断となり，-25日から-14日までプレドニゾロン(PSL) 30mg/dayを投与され，軽快傾向であったため退院となった.Day 0の定期受診にて急性肝障害を指摘され緊急入院となった.入院時意識は清明.肝逸脱酵素の上昇，ビリルビンの軽度上昇が認められたが凝固能は正常であった(Table 1).画像診断では胃癌と肝転移の所見に変化は無く，その他明らかな異常所見は認められなかった.グリチルリチン製剤(SNMC)投与にて経過観察していたところ，IgAクラスE型肝炎ウイルス抗体(IgA-HEV抗体）陽性と判明し，急性E型肝炎と診断した.Day 13には肝障害は改善したため退院とした.