尿中cystatin C測定の臨床的意義

摘要

背景：尿中の低分子蛋白質（LMWP）の測定は，尿細管での再吸収が障害される結果増加するため尿細管障害の診断に使われる。 この目的で用いられるLMWPにβ2－microglobulin（β2mG），α1－microglobulin（α1mG）などがある。 血中cystatin Cは糸球体濾過億の有用なマーカーとして知られているが，尿中のLMWPとしての特性はあまり検討されていない。 尿中cystatinCの臨床的有用性について評価した。対象と方法：種々の腎機能の患者130例，健常者62例，腎実質性急性腎不全1症例，および腎前性急性腎不全1症例を対象とし尿検体を採取した。尿中cystatinC，β2mG，α1mGはimmunonephelometIy法で測定された。 Creatinine clearance（Ccr）が種々の腎機能の患者130例で施行された。 creatinine（CRE）はenzyme assay法で測定された。 結果：種々の腎機能の患者130例をCcrによって，I群（15例，Ccr＜30ml/min），II群（30例，30<=Ccr＜70ml/min），III群（85例，CcI>=70ml/min）の3群に分け，24時間の尿中の排泄量を求めた結晃cystatin C，α1mGはI，II，III群間でCcrの低下により有意な増加を認めたが，β2mGでは有意ではなかった。 I群，III群間のcystatinCの増加の割合は，きわめて大きかった。 cystatin Cおよびβ2mGの丘actional excretion（FE）を同様の群で貸出したところ，両者ともCcIの低下によりI，II，III群間で有意に増加したが，I群，III群間のFE cystatin Cの増加の割合はFEβ2mGに比べ大きかった。 健常者62例の随時尿を用い，CREとcystatin C，β2mGおよびα1mG各々の濃度の関連をみたところ，CREとcystatin Cには他の2者に比べて良い相関が認められた。 1例ずつの検討ではあるが，腎実質性急性腎不全における尿中cystatin Cの増加は，β2mGを含む他のLMWPに比べて大きく，腎前性急性腎不全例では小さかった。 考察：LMWPのnephronにおける濾過，再吸収の機構の詳細はいまだ不明の部分が多いが，cyStatinは他のLMWPと異なる特性を有し，臨床における有用性が示唆された。