人工心臓用非接触電力伝送トランスフォーマの設計 絶縁被膜層の厚さと伝送効率および誘導電流の関係

摘要

人工心臓への給電方法の一つに，体外と体内に配置された－一組のパンケーキ状の空心型コイル間で，電磁誘導を用い無線給電を行う方法がある．我々は従来までに最大伝送効率98％の超高効率空心型経皮トランスの開発に成功したが，皮下埋込みを考慮すると，感電を防ぐためにコイル表面をシリコーンなどの低導電率物質で覆う必要がある．しかし，被膜層の厚さが薄すぎると，コイル間の生体組織（皮膚）を介して容量的な結合が生じ，その結果伝送特性の変化，生体組織への高周波電流誘導による生体刺激などの現象を引き起こす可能性があるため，どの程度皮膜層の厚さを設ければ十分か現段階では全く検討が行われていない．そこで，本報告では伝送性能と生体安全性の観点から電力伝送に問題ない被膜層の厚さについて検討を行った．被膜材質をポリエチレンとし，体内用空芯コイルの被膜厚を0．03～0．8mmに変化させ，（電力伝送効率実測，（コイル表面温度測定，（3）生体組織中の電流密度解析を行った．