シンポジウム2「STDと不妊症」4）STDに起因する卵管性不妊

摘要

卵管性不妊は，不妊症の原因の中で約30パーセントを占め，最も頻度の高いものである?また，卵管炎は，子宮内膜症と並び卵管性不妊の原因として大きな問題となっている．これまで，卵管炎を含めた女性性器感染症の起炎菌は，Escherichia coliなどの腸内細菌が，一般的であった．しかし，近年，若年者の問で安易に無防備な性交渉が行われるようになりChlamydia trachomatis (C.trachomatis),Neisseria gonorrhoeae (N.gonorrhoeae)による卵管炎が，急速に増加しつつある?特に，本邦においてC.trachomatisおは，10年前と比較し4倍以上の著しい罹患率の増加を認め，一方でN.gonorrhoaeaによる性器感染症も，耐性菌の出現により増加傾向を示している．また，C.trachomatis,N.gonorrhoeaeによる女性性器感染症は，急性期に自覚症状が乏しく，無治療のまま放置され慢性感染や不顕性感染に移行することも珍しくない．妊娠に至る過程で卵管は，単なる精子，卵子，受精卵の通過経路ではなく，受精や胚成長の場でもある．さらに，卵管采は，排卵した卵子をPick upする役割も担い，その機能は多岐にわたる．