がh治療における心毒性-血栓塞栓症：がhと血栓の関係について-がhによる血栓形成のメカニズムならびに化学療法に伴う血栓症

摘要

がhはRudolf Virchowのいう「治癒すること のない創傷」であり，その増殖や浸潤過程で生体 防御反応を担う血小板?凝固線溶系を巧みに利用 する.がhと血栓症との関係は，1823年にフラ ンス人内科医Jean Baptists Bouillaudが「がh患 者にみられる下肢の『浮腫』は，生じたフィプリ ン血拴により静脈が閉塞したためである」と記述 したものが最初であろう.その約40年後，Armand Trousseauは胃がh患者に併発する "Phlegmasia alba dolens"(移行性血栓性静脈炎） を報告した後に，自らが膵臓がhに罹患しその血 液が凝固亢進状態にあることを示した.下肢深部 静脈血栓症を併発し死亡したというアイロニーが 今日においても強く印象付けられている.