高齢者福祉施設で発生したウェルシュ菌食中毒事例について

摘要

平成28年1月に堺市の高齢者福祉施設で喫食 者202名中95名が下痢を主徴とする食中毒症状 を呈した。調査の結果,患者便(9検体中6検体) および同施設が1月5日に提供した「鶏と根菜の煮物」の保存食からエンテロトキシン産生ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)を検出した。また,これらの分離菌株についてパルスフィールド?ゲル電気泳動法(PFGE)を行ったところ,患者便由来6検体および食品由来1検体はすべて同一PFGEパターンを示したことから,「鶏と根菜の煮物」を原因食品とする食中毒事件と断定した。「鶏と根菜の煮物」(以下「煮物」という。)は同施設で調製され,加熱後の不適切な取扱いが食中毒の発生要因になったと考えられた。しかし,95名の発症者がいたにも関わらず保存食から検出されたウェルシュ菌の菌量は5.0 x 10 ~1 CFU/gと少量であった。過去の知見において発症する可能性の低い菌量で食中毒が起きた原因を究明すべく,調理状況を再現し検討を行ったので報告する。