胸郭成行術

摘要

胸郭成行術は，もともと肺結核の治療目的に考案された術式である.結核が国民病といわれてい た昭禾ロ 20年1弋は，streptomycin, calcium para-aminosalicylate hydrate (PAS) ， isoniazidなどの抗結核薬が登場したばかりで，結核を治療するためには手術が、必要な時代であつた.胸郭成形術は，結核菌が偏性好気性菌であるという性質を利用した術式である.結核菌は酸素がないと生育できないため，結核菌が住みついている空洞を漬して，空洞内への経気道的な酸素の流入を遮断すれば結核菌は死滅するといぅ発想から，胸郭成形術は生まれた.肋骨を切除すると，胸壁はその支えを失い落ち込み，肺も虚脱する.それによつて空洞を漬すのが胸郭成形術である（図1).同様の原理に基づいた治療法に人工気胸術があるこれは胸腔内に人為的に空気を注入して気胸の状態を生じさせ，それによつて肺を虚脱させて空洞を潰す治療法である.