未治療アルコール依存症患者に合併した振戦に本態性振戦の診断のもと脳深部刺激療法が施行された後，過量服薬を契機に精神科へ受診した1症例

摘要

抄録：20歳代からアルコール依存状態であつた54歳男性患者に，本態性振戦の診断のもとに脳深部刺激術(DBS; Deep Brain Stimulation)が施行され，振戦は改善した力;，手術の1年後に過量服薬を契機に精神科へ紹介受診·精査入院となった症例を経験した。初診時に未治療·未介入のアルコール依存症状態を認めた。神経画像で脳萎縮，心理検査で認知機能障害を認め，アルコール依存による脳機能への影響が強く疑われた。病歴からは，本態性振戦がアルコール依存を高めた可能性も考えられた。DBS施行後にさまざまな精神医学的問題が報告されており，アルコール問題や既存の精神医学的な評価や介入なしにDBSが施行された場合，続発する精神医学的問題が複雑になる可能性が考えられた。本邦ではDBS施行後の精神医学的問題の症例報告は乏しく ,今後DBSの症例数は増加すると予想されるため，注意喚起の意を込めて報告する。