身体表現性障害（疼痛性障害）による歩行困難に対して整形外科とのリエゾン治療が奏功した1症例：BPDに併存するADHDの鑑別をめぐって

摘要

整形外科に通う慢性疼痛患者の中には，神経学的所見に一貫性がなく難治性で，その背景に精神医学的問題を有すると思われる患者が少なくない。しかし，その精神医学的問題が治療者によって適切な評価をなされずに，侵襲的な治療を繰り返し，さらなる痛みの増悪を招くという悲惨な経過をたどる患者もいる。そのため当院では整形外科とリエゾン治療を行っている。3年間歩行不能であった身体表現性障害（疼病性障害）患者に対して，薬物療法と認知行動療法が奏功し杖で歩行するまでに回復した一症例を報告した。発達歴の系統的な聴取と，施行した心理·生物学的検査における異常所見より，疼痛性障害とBPDに併存するADHDが診断された。また，BPDと診断される患者の中に，ADHDを併存する一群が存在することが考えられ，その鑑別のために系統的な発達歴の聴取や，治療者が感じる操作性の強さ，各種心理·生物学的検査が有用であると考えられた。