未来を拓くサイエンス 71 筋萎縮性側索硬化症という疾患

摘要

最近、友人の一人が筋萎縮性側索硬化症（Amyotrophic lateral sclerosis，略称：ALS）で亡くなった。一年前に会った時には元気で活躍している様子だったので、逝去の知らせを受けたときには、とても信じられない思いだった。ALSというと、二〇一八年三月に七六歳で亡くなった世界的な宇宙物理学者スティーヴン·ウィリアム·ホーキング（英：Stephen William Hawking）博士が、長年に亘ってこの疾患で苦しみながら、優れた研究成果を発信し続けたことが思い出される。博士の場合、発症は二一歳の頃だったから、ほぼ五五年間もこの疾患と闘っていたことになる。他にも、多くの著名人がALSによって亡くなったことや、現在も闘っていることが知られているが、それにもかかわらず、この疾患の症状、原因、治療法などについては、一般にはよく知られていないのが現状である。本稿では、この知られているようで知られていない疾患について概説し、最近明らかにされつつある新しい治療法についても紹介したい。