汚染された土地を取り戻すために

摘要

福島県のほぼ東半分は、福島第一原子力発電所の冷却水喪失事故（LOC A）に伴う放射性物質の大放出の影響をもろに被った。放射能汚染の強い区域は、発電所から二〇キロメートル圏の警戒区域を越え、北西方向に三〇キロメートル以上離れた飯館村の全域や川俣村の一部にまで及hだ。飯館村で非常に高い放射線量率が観測されることは、早くから知られていたが、大放出からほぼひと月の間、住民には、村内のモニタリング結果さえ公式には伝えられなかった。そして、放射線医学的には極めて正しい「一〇〇ミリシーベルトを超えない放射線では健康に影響がない」という説明に安心し切っていた村人は、四月二二日になって、突如、村が計画的避難区域に指定されたことを知らされ、全員が難民となって見知らぬ土地に逃げ出すことを余儀なくされた。