電子線照射装置用直流高電圧電源への共振型空心トランスの適用

摘要

近年、電子線照射装置(EPS)は、電線·タイヤなどの高分子材料の分子間をつなぐ架橋や、医療器具の殺菌など、工業用途に幅広く利用されており、装置小型化のニーズはますます増加している。 0.5～5MV EPS用の直流電源としてはコッククロフト·ワルトン(CW)回路が良く使用されている。 CW回路は、コンデンサとダイオードをカスケードに接続したもので、昇圧トランスから供給された数十kVの電圧をダイオードとコンデンサで整流し、これを多段に直列接続して直流高電圧を得るものである。 CW回路の小型化には、運転周波数の高周波化によるコンデンサ容量の低減が効果的であるが、従来は、昇圧トランスのため運転周波数が制限され、10kHz以下としていた。 これは、高周波化に伴って鉄損が増加するので、これを防ぐため磁束密度の低減が必要となり、鉄心が大型化するためであった。 また、トランス自体では、2次が100kV程度の高電圧であることから、巻線と鉄心間に十分な絶縁が必要となり、小型化の妨げとなっていた。 このようなことから、昇圧トランスの簡素化と運転周波数の高周波化によるCW回路の小型化のため、新たに鉄心を無くした共振型空心トランスの実用化を図ったので、報告する。