ホイスラー化合物Ru{sub}(2-x)Fe{sub}xCrSiの磁性

摘要

ホイスラー合金は，強磁性形状記憶合金やハーフメタルなどの新しい機能性材料になりうる物質として注目されている．しかし，現実には多くの場合ハーフメタル性は乱れにより破壊されることが明らかになっている．最近，バンド構造計算によりホイスラー型合金Ru{sub}(2-x)Fe{sub}xCrSiが，乱れに強いハーフメタル，あるいは，それに近い高いスピン分極率をもつ物質であると予測されている．我々はこの物質を実際に作製し，0.5≦x≦1.8の組成範囲で，ホイスラー型構造(L2{sub}1)になり，強磁性を示すことを見出した．Feの濃度xが2に近い試料での飽和磁化は約2μB/f.u.であり，理論的に予測された値に近く，高いスピン分極率をもつ物質の候補であるといえる．この物質の磁性について理解を深めるため，種々のxの試料について磁気的性質を調べた．