マッチング行動を説明するベイズ的意思決定モデル

摘要

ヒトや動物の脳によって行われる意思決定プロセスが決定論的に行われているか，確率論的に行われているかということは，意思決定に関わる神経基盤の解明に当たって重要な問題である．自然界の採餌環境を模した採餌課題を用いた実験ではヒトや動物はマッチング行動をすることが知られている．採餌課題に見られるマッチング行動を説明する従来のモデルは，選択肢毎に選択確率を学習し，それに従って意思決定するという確率論的なものであった．我々は，環境に対する誤った信念に基づいた決定論的なベイズ意思決定モデルが，静的な採餌課題において厳密なマッチング則に従う行動を示すことを証明する．このモデルに環境の変わりやすさに関する信念を導入したモデルは，動的採餌課題においてアンダーマッチングと呼ばれる実験的によく観察されている現象を再現することを示す．さらに，このモデルにおける選択の報酬履歴依存性は，サルの実験で報告されている二重指数関数形を示すことが分かった．