海馬の文脈依存情報および報酬に基づいて行動を制御する前頭前野モデル

摘要

前頭前野は，行動の実行制御や認知機能，動機づけなどに重要な脳領域である．特に，報酬に基づく実行制御の学習（強化学習）には，前頭前野に存在する神経修飾物質ドーパミンが深く関与している．加えて，T字交替迷路のような空間課題の遂行には，海馬から前頭前野への文脈情報も不可欠である．本研究では，前頭前野と海馬の相互作用を調べるため，海馬からの行動履歴情報と，ドーパミンによる報酬信号から行動制御を学習する前頭前野スパイキングニューラルネットワークを作成した．また，このモデル特性を評価するためにT字交替迷路課題のシミュレーションをおこなった．その結果，本モデルが報酬を得るための効率的な行動を獲得することを示し，また，「適切な量のドーパミンが実行制御のパフォーマンスを上げる」という生理学実験の結果と一致することを確認した．