セルミの擬似溶液とその時代－コロイド化学発祥の一断面一

摘要

19世紀の中葉コロイド化学は誕生した．この誕生に寄与した人として3人の科学者をあげたい．一人はコロイド化学の開祖とされている英国の化学者グレアム（T．Graham）であり，他の二人は英国の科学者ファラデー（M．Faraday）とイタリアの化学者セルミ（F．Selmi）である．グレアムは1861年“コロイド”の名を提言した人，ファラデーは1857年，金コロイドを用いて無機コロイドに関するパイオニア的研究をした人である．その10年前，セルミは紺青の水溶液を詳しく調べ，これは食塩やショ糖などの水溶液とは全く違う溶液であることに気付き，これに擬似溶液の名を与えた．