18~19世紀イギリスにおける”art“と絹織物 -「奢侈」の検討を中心に-

摘要

本稿は，バーグ（Maxine Berg）が論じる「新しい半奢侈品（new sem-luxuries)」と，伝統的な奢侈品である絹織物との閨係を考察するものである.バーグは，経済史家が永らく狭い意味での「技術」にかかわる事象のみ捉え，"art"については美術史（art history）の領域として考慮してこなかったことを指摘する.そのうえで，当時の“art"という概念は，今日では別個のものとして捉えられている美術（art)と技術（technology）の両方を含hだ概念であると論じる.この観点から，捺染キヤリコゃバックルなどの金属小物，陶磁器といった重要な産品を「新しい半奢侈品」とし，これらが「イギリスらしさ（Britishness）」を形成し，新興の都市エリートを中心に消費され，当時の"art"として-今日的な言い方をすれば美術的にも技術的にも -重要な役割を担ったと論じる.