邪馬台国最新事情

摘要

今年3月のことであるが，福岡県教育委員会を中心とする福岡歴史ロマン発信事業実行委員会は，邪馬台国の候補地をインターネットなどを使って広く全国に公募したところ，およそ1,000人からの投票があった。集計結果によると，候補地が九州各県に及ぶことは予想どおりであったが，第1位は甘木·朝倉地域の131票，次いで博多湾沿岸の102票に続いて，吉野ヶ里遺跡の86票と出た。そして，第4位が筑後御井地域の84票であった（図1）。その結果を見て感じることは，考古学からは吉野ヶ里遺跡を除くと，ほかの3つの候補地にはいずれもきわめて顕著な遺跡·遺物があるわけでもなく，マスメディアに著名な研究者の影響が大きく反映しているよう思えてならない。それはともかく，候補地の第1位から第4位までを得票した北部九州において，卑弥呼が都とした邪馬台国の存在を裏付ける物証つまり考古資料はあるのであろうか。この間題を検討する前に，ここで，邪馬台国論争の歩みについて振り返っておこう。