n/pタンデム色素増感太陽電池の実証研究/グレッツェル型セルの枠組みからの開放

摘要

地球温暖化は2020年ごろにはその影響が顕著になるといわれている．温暖化以外の環境被害を引き起こす恐れが無く，量的にも十分な温暖化抑制効果をもたらせる技術は省エネルギーと太陽光エネルギー利用（バイオマスも広い意味で太陽光エネルギー）以外には考えにくい．なかでも利便性の点で太陽電池への期待は大きい．経済産業省とNEDOはその期待に応えるべく太陽電池普及ロードマップを策定している．マップによればセルモジュール製作コストが50円/W以下になれば火力発電と競合できて（おそらく炭素税等のハンデキャップを火力発電に賦課する条件で），太陽電池が大規模に利用される．当初のマップ（90年代半ばに策定）は2020年までに50円/Wを達成するとしていた．しかし，最近数年間の半導体型太陽電池のコストは数100円/W台で落ち着きを見せマップの想定曲線から乖離した．故にロードマップは2004年に改訂され，50円/W 達成は2030年に先延ばしされた．一方，色素増感太陽電池(DSC)の量産時製作コスト推定値(Research Triangle研究所，NEDO等の8機関がそれぞれ発表）の中間値は概略75円/W（太陽光発電効率10％として）で，高純度半導体を使う従来型の太陽電池と異なり本質的に安価である．従ってDSC発電効率15％を実現すれば50円/Wに到達し，温暖化抑制の実効を挙げられることになる．筆者は地球温暖化抑制のためにDSC発電効率15％達成に向けた研究の発展を願う立場で，n/pタンデム型色素増感太陽電池の可能性をアピールし，多くの研究者がこの分野に参入するきっかけとしたい．