積雪寒冷地における太陽熱利用空調システムの性能評価

摘要

高度経済成長期に建設ラッシュとなった非住宅(事務所，学校，工場等）の建築の多くは，長い年月を経た今，物理的かつ社会的な寿命を迎えつつある.今後,高い耐震·環境性能を有する良質なストックを確保していくことが求められ，超巨大地震·津波からゲリラ豪雨·豪雪に至るまでのあらゆる自然災害の脅威に対し，責重なハード&ソフトウェア資産として計画的に守られなければならない.このような状況の中で，近年話題のネット·ゼロ·エネルギー·ビルに採用されているアクティブな最先端技術を組み入れることと同時に，寒冷地の基本となる優れた断熱·気密技術により建築自体の品質が向上することで，気候風土に適した新たな設備システムの構築が期待される.つまり，多彩なユーザーの快適性（健康·安全）を担保しつつ，高効率な設備システム（再生可能エネルギーの利用,コージェネレーションシステムの導入，電力+熱の融通，過剰設計の抑制等）の開発が期待されるということでめる.今回，積雪寒冷地における再生可能エネルギーを利用した最新の空調システムを紹介するにあたり，北方型環境建築（北海道特有の気候·風土·歴史·文化に則し，次世代を見据えた地球環境に配慮した非住宅の建築）の事例として，2013年竣工の「北海道ガス札幌東ビル技術開発·研修センター」(CASBEE札幌Sランク，BEE = 3.2)を取り上げる.本施設には，再生可能エネルギーを利用した空調システムに関連する環境技術として，地中熱利用が可能なクールヒートトレンチ，雪冷熱利用が可能な自然落雪式貯雪塔等が導入され，本誌では，主に太陽熱及び排熱利用が可能なソーラー吸収式冷温水発生機廻りの性能評価結果について報告する.