イラク戦争は中東に何をもたらすか

摘要

米ソの対立を利用しながら自らパワーゲームに参加することで政権を保ってきたフセイン政権は，ソ連がゲームを降りて以来，大国の駆け引きを利用した力の政治が次第に困難になっていた。 米国のイラク攻撃は湾岸戦争やアフガン戦争と大きく異なり，実質的に中東一般の支持を得て始めたことではなかった。 ソ連崩壊以降，中東世界においては防衛や経済で自立的な力がない上，各国間で複雑な利害関係があるため，米国という地域外のスーパーパワーに依存せざるを得ない状況があった。 こうしてイラクやイランなど人口，政治力，資源がある国だけが反米勢力として残ってきた（もう一つの反米国シリアは親イランで，イラクとはバアス党の正統争いで対立してきたが，近年，イラクとも政治，経済，軍事でつながりを深めてきた）。