潤滑油の傾向管理の将来像

摘要

機械が設計通りの性能を発揮するためには稼働部における潤滑が必要不可欠であり，機械の血液とも言われる潤滑油の果たす役割は極めて大きい．機械の異常や故障を未然に防止するためには潤滑油を適正な状態に維持せねばならず，潤滑油の状態を把握して管理することが設備保全の重要要素であることは明らかである．潤滑油の状態調査は物理化学性状の測定や簡易試験による性能評価によって行われるが，単発の結果から異常を判断できるのは劣化がかなり進hだ，いわゆる“重症”になっ了からである．不具合の発生を未然に防ぐためには機械と潤滑油が健全であるうちに先を見越して手を打つことが必要であり，定期的な診断によって潤滑油の状態変化を追跡する傾向管理が有効である．また傾向管理を行っていれば通常では起こり得ない異常な変化にも気付くことができ，突発性の要因で起こった不具合の拡大を防ぐことも可能である．潤滑油の傾向管理を行うためには，機械の中で潤滑油がどのようなストレスを受け，どのように変化（劣化）し，それが機械の故障モードにどう影響するかを理解したうえで，適切な管理項目を選定して余寿命の推算ロジックを考えることが有効である．