左連続動的システムにおける周期軌道の指数安定性について－一般化ポアンカレ写像に基づくアプローチ

摘要

これらの動機を踏まえ，本論文では左連続動的システムを対象とし，一般化ポアンカレ写像に基づくN-凋期軌道の指数安定性の議論を行なう．しかしながら，前述の文献8）の場合と同様に，本論文で得られる指数安定性に関する結果は，文献13）のLyapunov安定性と漸近安定性に関する議論の自明な拡張ではない．また，文献8）の結果を特別な場合として包含している．文献4）では左連続動的システムに対して，初期値に関する一様半連続性や結合連続性という連続性の概念を導入しているが，本論文における一つ目の結果は，従来の局所Lipschitz連続性に相当する新たな二つの連続性を提案し，これらの等価性条件を明らかにしたことである．ハイブリッド軌道の安定性を評価する際には，その軌道に摂動を加えた軌道との距離を評価する必要があるが，これらの軌道が不連続な状態遷移を起こす時刻が異なることが問題となる．詳細は続く本文で述べるが，本論文で明らかにする等価性条件の下で，提案した二つの連続性に基づく解析を評価区間によって使い分けることで，異なる遷移時刻をもつ軌道間の距離を任意の時刻にわたって評価できるようになる．つぎに，この解析手法を駆使して左連続動的システムのN-周期軌道の指数安定性と，対応する一般化ポアンカレ写像における平衡点の指数安定性との等価性条件を導出したことが本論文の三つ目の結果である．前述の理由から，この結果はより広いクラスのハイブリッド周期軌道に対する指数安定性の判定や，安定化制御器の設計に有用である．さいごに，このような解析手法は，周期軌道に限らず一般的な左連続動的システムのハイブリッド軌道の解析においても利用できる．