水平な切断面が楕円のモデル物体による重力の計算式と重力図の主な特徴

摘要

1）産業技術総合研究所が発刊している20万分の1重力基本図には同心楕円状の重力異常が多数見られる。 同心楕円状の重力異常を生ずる地下構造を把握し，解析することを目的として，モデル構造による重力計算式をスペクトル分布による方法と，空間分布による方法についてそれぞれ導出した。2）スペクトルの計算には，スペクトル分布による方法が適しているが，重力図作成の正方格子点重力値の計算には空間分布による方法のほうが計算時間が少なく，計算精度が高く，等値線の乱れが小さい。 3）与れら同心楕円状の重力異常を生ずるモデル（楕円筒，楕円錐，切り口が楕円の放物体，楕円体，切り口が誤差関数形の物体）による重力図はいずれも中心点に対称な同心楕円状の等値線からなる重力図である。4）密度差如，モデル上面の楕円の半径A_1，B_1，原点0から上面までの深さZlが同じで，しかも質量（欠損）が同じ場合には中心点における重力億の絶対値は楕円筒，楕円錐，楕円体，切り口が楕円の放物体，切りロが誤差関数形の物体の順に大きくなっている。 5）等値線は楕円筒では半径A_1，B_1の楕円周のまわ に密である。 楕円錐は半径A_1，B_1の楕円周と半径A_2，B_2の楕円周の間に等値線が集中している。 切り口が楕円の放物体と楕円体および切り口が楕円の誤差関数形物体では半径A_1，B_1の楕円周のまわりで等値線の間隔が密で中心点に近づくほど粗くなる。 等値線の間隔は切り 口が楕円の誤差関数形物体，切り口が楕円の放物体，楕円体の順に密である。 6）青森地域重力図には，黒石市の南南東方向に約3km隔てた地点を中心として重力差が約27mgalの同心楕円状の重力異常が見られる。 この重力異常をモデル計算によってその形状を推測した。 この重力異常はP_1を第四紀層と第三紀層の平均密度としてその値をP_1＝2．10g／Cm~3とし，基盤をなす二畳紀h中生代前期の堆積層の密度をP_2＝2．60g／cm~3とみなし，その密度差をP＝β_1－β_2＝--0.50g／cm~3として，地表の中心点0から上面までの探さをZ_1＝100m，上面の楕円の半径を A_1＝15，000m，B_1＝9，000m，下面までの探さをZ_2＝1，647m，体積が588．25×109立方メートル，質量（欠損）294．12×109トンの精円錐状の地下構造を想定すれば，青森地域重力図の黒石市周辺の重力異常と類似な重力異常を算出し得る。