移動荷重による波動場のシミュレーションにおける振源モデリングについての考察（そのII）

摘要

走行する列車により生ずる沿線の振動を力学に基づいてシミュレートする3次元数値解析ツールを開発するにあたり，振動源を表す移動荷重が適切に取り扱われかナればならない。 我々は，前報において，その移動荷重を列車同期荷重と位置同期荷重の2種類に分類し，（a）一様ないし層状地盤では，前者の荷重による応答は非常に小さく，後者の荷重の応答が卓越すること，および，（b）前者の荷重による応答はモデル走行路の始終点から放射される波の影響を著しく受けること，を述べた。 しかし，この結果はいくつかの数値シミュレーションにより描出された事例に基づくため，必ずしも厳密に証明されたものとはいえない。 本論は，この妥当性について，2種類の解析的方法を通じて，さらなる論拠を示すものである。 第1の方法は考察の伝播系に音波のグリーン関数を応用するもので，強い仮定である代わりに，厳密な解析的取り扱いを可能にする。 それにより，前報で述べた（a），（b）の現象が再現され，また考察の系のある一般的な挙動も描出される。第2の方法は表面波伝播を表すグリーン関数を用いるもので，より弱い仮定にはなるものの厳密な取り扱いを不可能にする。 しかし，その遠方近似は可能であり，それにより（a）に類似の現象の生起が示唆される。 第1の方法は，数倍シミュレーション結果の挙動を解釈する上で，一つの便利な道具と考えられる。