下水汚泥からのリン回収技術

摘要

全世界で年間に採掘されるリン鉱石の量は約1億5千万トンにも達し，現在のコストで採掘できる期間は30～40年と言われている。 リン資源枯渇の問題はリン鉱石をほぼ100％輸入に頼っている我が国にとっては早急に対処すべき問題であるが，その間題意識は低い。 また，リンの国内蓄積による水環境の富栄養化が顕著になっており，その対策が求められている。 これらを同時に解決するためには，リンのリサイクル技術の開発が必要不可欠である。 そこで我々は，下水汚泥からリンを回収する技術について研究を進めてきた。 下水汚泥からのリン回収技術の開発において，リンを合有する汚泥から短時間で効率良くリンを溶出できる方法を探索した。その結果を以下に示す。 (1)汚泥にオゾン注入後アルカリを添加するオゾン+アルカリ処理がリンの高速·高効率溶出に有効であった。(2)オゾン+アルカリ処理により相乗的なリン溶出効果が得られ，基礎実験で処理時間10～15分程度で約80％のリンを汚泥から溶出できた。 (3)相乗的なリン溶出効果のメカニズムについては，汚泥の細胞壁や細胞膜を構成している蛋白（たhぱく）質や脂質がオゾンと反応して，細胞壁や細胞膜の一部が損傷する。続いてオゾンとの反応で破損した細胞壁や細胞膜とアルカリが反応して細胞膜の溶解が促進されリンが細胞内の物質とともに大量に液中に溶出されると推測された。 今後は，最適な溶出条件を把握するとともに，溶出したリンを回収する方法について検討する。