準天頂衛星システムのセンチメータ級測位補強サービスが拓く高精度測位社会

摘要

2018年度に実用サービスが開始される準天頂衛星システムでは，従来の測位精度を飛躍的に高めるセンチメータ級測位補強サービス（Centimeter Level Augmentation Service：CLAS）が提供される。CLASでは，衛星測距データに含まれる各種誤差を補正するデータを準天頂衛星経由で配信することで，高い測位精度（静止時仕様値水平：6cm）を実現する。また，測位衛星の異常をリアルタイム監視するインテグリティ機能を持ち，測位情報の信頼性を確保できる。CLASは，正確な位置情報に様々な情報を組み合わせて高度に活用する“G空間社会（地理空間情報高度活用社会）”の実現に向けて，IT農業，IT施工，自動車の自動運転，鉄道の運行管理·保守等，様々な分野への応用が期待されている。また，三次元ダイナミックマップとの連携によって，自動車の自動運転支援等の分野への応用も期待されている。このサービスの普及を促進するため，2017年9月に準天頂衛星による試験サービスが開始され，各種の利用実証が行われている。また，CLAS評価用として測位端末を開発し，一般ユーザーへの貸出しを行っている。このシステムの開発では，海外を含む普及促進のために伝送フォーマットを国際標準規格と互換性を持つ形式で定義·採用した。自動車市場等に向けた高精度測位チップの量産化によって，劇的な低コスト化が図られ，普及が促進することが期待される。また，同種の補強サービスの欧米を初めとする世界各国への展開を計画する海外他社と協業し，端末の相互運用性を確保し，国際展開が基本の自動車市場等での普及を促進することにした。