新たなエレベーター地震対応システム

摘要

従来，エレベーターの地震時における安全対策として，地震の初期微動を感知するP波感知器や，本震を感知するS波感知器を設け，地震発生時にエレベーターを最寄階に停止させる地震時管制運転システムが普及している。 一方，2005年7月の千葉県北西部地震では，都心部の多くのエレベーターが運転休止し，通常運転への復旧までに多大な時間を要するとともに，閉じ込め事故が発生した。 また，2003年9月の十勝沖地震，2004年10月の新潟県中越地震で観測された長周期地震動でも，エレベーターの機器に被害が生じた。 このような事故を契機として，より安全なエレベーターの地震対策が，現在求められている。 そこで，新しいエレベーターの地震対策として，次に示す3つの技術を開発した。 まず，従来のP波感知器よりも早く地震を感知し，エレベーターを安全に最寄階へ停止させるために，気象庁の緊急地震速報を利用した新しい地震時管制運転を開発した。 次に，従来の地震感知器では検知が困難であった長周期地震動に対応した新しい感知器を開発するとともに，ロープの揺れ増大による昇降路機器の被害を防止する長周期地震時管制運転を開発した。 さらに，地震後のエレベーター休止台数低減のために，自動的に診断運転を実施して仮復旧する地震時自動復旧システムを開発した。 これらの新しい技術によって，昇降路機器の耐震性向上と，乗客サービスの早期再開を実現する。