尾瀬でシ力が食べている植生

摘要

群馬，福島，新潟の3県にまたがる尾瀬は，本州最大の高層湿原である尾瀬ケ原，只見 川の源流にあたり噴火によりせき止められてできた尾瀬沼，これらを取り囲む至仏山と燧 ケ岳という二つの百名山を擁し，会津駒ケ岳，田代山，帝釈山とともに尾瀬国立公園に指 定されています。豊かな自然景観に恵まれ，年間30万人を越える人が訪れます。その尾瀬において，本来は生息していないと考えられていた二ホンジカ（以下，シカ） の生息が確認されたのは1990年代の半ばのことです。その後，採食や泥浴びのためにシ 力がS原を掘り起こして生じる湿原の裸地化や，植物の葉や花を食べてしまうなどの植生 への被害が顕在化したため，環境省では，2000 (平成12)年に「尾瀬地区におけるシカ 管理方針」を策定し，本管理方針に沿って，テレメ卜リー調査（発信器装着による個体追 跡調査）やDNA解析によるシカ移動経路把握調査，空中撮影および現地調査による植 生被害のモニ夕リング調査等を実施するとともに，他機関に先駆けて尾瀬の核心地周辺に おいてシ力の捕獲を実施してきました。しかし，周辺地域における捕獲を継続しているに もかかわらず被害は拡大する傾向を示したため，被害防止対策の更なる推進に向け，2009 (平成21)年に管理方針を全面的に見直した新たな管理方針「尾瀬国立公園シカ管理方針」 を策定し，尾瀬の核心域を含めた捕獲の実施や，効果的な捕獲方法を検討するための調査 の充実に取り組hできました。