神宮徴古館農業館蔵のいわゆる渋川春海作地球儀に関する研究（第1報）

摘要

伊勢神宮徴占農業館蔵の渋川春海作とされる地球儀は今［1、重要文化財に指定されているか、この調査は必ずしも充分ではなく、深澤（1910），藤田（1942）、秋岡（1988）らの記載があるのみである。 これらの巾で、少なくとも深澤（1910）は当時としては詳細な調査の後、元禄4年（1691）に春海か内宮文殿にそれぞれ円周3尺3寸、2尺6寸の大球儀、地球儀を奉納したことを記載し、後者については球面上世界図の形状、地名、注記を記載しているが、観察不l分による誤謬か一一部に認められる。 藤田（1942）は、球面上に描かれているメガラニカの形状から利蠣讃の坤輿萬凶全図に基づくこと、赤道、南北半球が南、北回帰線と極圏に区分されること及び経線が欠けていることを指摘した。 筆者は本邦に残存する地球儀調査の一環として、渋川春海作とされているこの地球儀を調査したので報告することにしたい。