黒ボク土における植物炭化物の分布と腐植組成あるいは非晶質Al成分との関係

摘要

A型腐植酸を含有する黒ボク土24試料を供試し，ポリ（メタ）タソグステン酸ナトリウム重液を用いた比重分画　 法によって，まず土壌から直接比重1．6以下画分（＜1.6　 画分）を分離した．さらに，土壌の比重1．6～2．0画分を　 HCl-HFで処理し，その処理物から＜1．6画分を分離した．これらの両＜1．6画分について，顕微鏡観察を行うとともに，有機態炭素を定量した．さらに，両画分の有機態炭素量と土壌の全有機態炭素量，腐植組成あるいは非晶質Al成分との関係を調べた．得られた結果は，以下の通りである．1）顕微鏡観察の結果は，全ての供試土壌において，酸処理前後の両＜1．6画分が，植物炭化物片を主要な成分としていることを示した．　 2）酸処理後の＜1．6画分の有機態炭素量ほ，0．74～42g kg~(-1)乾土であり，酸処理前の＜1．6画分の値（0．34～6．1g kg~(-1)乾土）と比べてほるかに高い値を示した．3）酸処理前後の＜1．6画分の有機態炭素の含量が，土壌の全有機態炭素に占める割合は，3．4～33％の範囲に分布し，24試料のうち12試料が9％以上の値を示した．また，その合量と土壌の全有機態炭素量との間にほ正の高い相関関係（γ＝0．748，0．1％水準で有意）が認められ，植物炭化物片は黒ボク土における土壌有機物の構成物質として看過しえないことが示唆された．4）酸処理後のく1．6画分の有機態炭素量と土壌の全有機態炭素量（γ＝0．767，0．1％水準で有意），A型腐植酸量（γ＝0．617，1％水準で有意），あるいはピロリン酸塩可溶のAl量（γ＝0．680，0．1％水準で有意）との間で比較的高い相関関係が示された．5）本研究で得られた結果は，植物炭化物が異ボク土におけるA型腐植酸の給源の一つであるという著者らの既往の見解を支持した．また，異ボク土において，植物炭化物片は，腐植の場合と同様，ヒドロキシイオン態のAlと複合体を形成していることが推察された．