全国食肉衛生検査所協議会病理部会研修会（第65回)における事例報告（II)

摘要

臨床的事項：著変は認められなかった.肉眼所見：左右卵巣にクルミ大から小児頭大までさま ざまな大きさの腫瘤が多数みられ.最大のものは右卵巣 にみられた.腫瘤表面は暗赤色で.血管の走行や出血が みられた.割面は乳白色，充実性で，囊胞形成や出血を 伴っていた.大型の腫瘤では中心部に壊死がみられた. その他，肝臓，腎臓，肺，心臓，子宮，盲腸.甲状腺，副腎， 枝肉の左腹膜及び左右肩部の皮下織にさまざまな大きさ の腫瘤がみられた.気管気管支リンパ節，左右腎リンパ ,腸間膜リンパ節，左右内側腸骨リンパ節，左右胸骨 'リンパ節はいずれも腫脹していた.それぞれの腫瘤及び リンパ節の割面は乳白色.充実性で，その多くにさまざ まな程度の壊死があり，一部には囊胞の形成もみられた.組織所見：最大腫瘤では，腫瘍細胞は充実性に増殖し ていた.空隙を中心に腫瘍細胞が放射状に配列する部位 もみられた.また.腫瘍細胞が腺管様構造を形成し増殖 する腫瘤もみられた（図1).腫瘍細胞の核は類円形で， 核小体を1つ有し，基底部側に偏在していた.また.細 胞質は好酸性であつた.卵巣にみられたいずれの腫瘍組 織でも核分裂像が頻繁にみられ，壊死が広範で，卵巣の固有組織は消失していた.腫瘍細胞の一部はアルシアン ブルー染色陽性であった.肉眼的に病変のみられたその 他の臓器及びリンパ節では，腫瘍細胞がさまざまな形態 (管状，充実性，索状.島状）で増殖し.そのほとhど が壊死や石灰化を伴つていた.