重度雄性化を伴う褐毛和種フリ一マーチン肥育牛 にみられた腎後性腎不全の1例

摘要

排尿異常を認める21力月齢の褐毛和種フリーマ一チン肥育牛が，臨床的に水腎症および腎不全と診断された.病理 学的検査において，泌尿生殖器の重度雄性化，腎膿瘍および尿路結石が明らかとなった.本症例は異常な尿道形態から 尿路感染症と尿石症を継発し，最終的に腎後性腎不全に陥ったまれなフリーマ一チン症例である. フリーマ一チンとは牛の異性多胎で生まれた雌子牛の うち，正常な性の分化が起こらず絶対的不妊症となるものである[1,2].一般に，外部生殖器は正常雌に類似し ているが，内部生殖器の発達がきわめて悪く，その程度 は未熟な雌性生殖器を持つものから，雄様生殖器を持つ ものまでさまざまである[1，2].今回，泌尿生殖器の重 度雄性化による尿道形態の異常から尿路感染症と尿石症 を継発し，最終的に腎後性腎不全を示した褐毛和種のフ リーマーチン肥育牛の1例に遭遇した.