最近における動物衛生研究情報（VI) 高精度なPCRによる鳥インフルエンザウイルスの迅速な亜型判定法

摘要

高病原性鳥インフルエンザは養 鶏産業に大きな被害を与える感染 症で，その原因となるウィルスは 変異しやすく，遺伝子は多様性に 富hでいる.このため，ワクチン による本病の制御は期待できず， 早期摘発と早期殺処分が対策の基本である.高病原性のH5N1ウィルスの感染が東アジア で続いており，ガン、カモ類によって国境を越えてウイ ルスが運ばれ，再び国内で本病が発生することが懸念さ れている.被害を最小限にするために，診断の迅速化が 求められている.鳥インフルエンザ（AI)の診断においては，ウィルス の亜型と鶏病原性を判定する必要がある.現在，亜型判 定の公定法には，抗血清パネルを用いた血清学的検査法 が用いられている.具体的には赤血球凝集素（HA)亜 型の判定は赤血球凝集抑制試験(HI)で，ノィラミニダ —ゼ（NA)亜型の判定はノイラミニダーゼ抑制試験 (NI)で行われている.共に世界的に利用されている力， 抗血清の供給が難しく，検出幅力s狭く，検出漏れが起こ る場合がある.また，判定に熟練を要し，多検体処理が 難しく， NI検査では2日間が必要である.