日本から再発見された3種のスッポンタケ属菌

摘要

日本から再発見された3種のスッポンタケ属菌，Phallus hadriani，P. rubrovolvatusざおよびP. rubicundusについて，子実体の形態的特徴に基づき記載，描画した．スッポンタケ属Phallus Juniusex．L．はスッポンタケ目スッポンタケ科に属し，汎世界的に分布する腹歯型の菌群である．本属は肉眼的に多様な形態を有する分類群を含み，全世界から18の分類群が認められている（Kirk et al．，2001）．日本では，小林（1938）が本属を含むスッポンタケ日商類について初めて詳細に整理し，分類学的検討をおこない，現在では，10種2変種（吉見、本郷，1989に基づくスッポンタケ属とキヌガサタケ属の合計）のスッポンタケ属菌が報告されているが，日本におけるフロラ研究は未だ遅れている．筆者らは，日本各地から採集された菌善が赤色を帯びるスッポンタケ属菌の標本を調査したところ，日本から過去に採集された記録があるものの，いずれも詳細な記載文や図版を伴った報告や，確実な標本記録がこれまでに存在しないPhallus hadriani Vtnt．，P. rubnvoIvatus（M．Zang，D．G．Ji＆X．X．Liu）KreiselおよびP. rubicundus（Bosc）Fr．と同定した．本論文では，日本から再発見されたこれら3種の子実体の形態について記載，描画し，形態的に類似する種との相違点を示すとともに，生態的特徴に関して報告する．さらに，日本産スッポンタケ属菌の既知種への検索表を示した．なお，本論文での属の概念や属内分類は，Kreisel（1996）の体系に準拠した．