周年放牧肥育牛による放牧草地での牧草摂取量

摘要

わが国の肉用牛肥育経営における飼料自給率は.平成25 年度のデータで1.2%と極めて低い（農林水産省2015)。著 者らは肉用牛肥育における飼料自給率向上と経営の安定に向 け，放牧を取り入れた肥育技術の開発に取り組hでいる。既 報（中村ら2013)では，周年放牧にコーンサイレージゃィ タリアンライグラス乾草等の自給飼料の給与を組み合わせる ことで，輸入飼料に依存せずとも肥育が可能であることを示 した。日本草地畜産種子協会の放牧認証制度では，放牧肥育 牛生産基準（日本草地畜産種子協会2009)を「肥育期間であつ ても粗飼料を多給し，できるだけ放牧を取り入れた方式によ り肥育する。（中略）粗飼料給与率は肥育全期間を通じた給 与飼料の少なくとも30%以上（乾物重ベース）とする。」と 位置づけており，既報（中村ら2013)の周年放牧システム は濃厚飼料を給与しておらず，この基準を満たすものである。 しかし既報（中村ら2013)では，周年放牧肥育牛の放牧草 採食量を出荷前90日間のみしか報告しておらず，放牧肥育 全期間の放牧地からの栄養摂取およぴ補助飼料の依存度は明 らかではない。そのため，放牧主体の肥育方法であったかど うか不明なままである。放牧牛の放牧草採食量は，草量，放 牧牛の体重ならびに補助飼料などにより変化する（農研機構 2009)o既報（中村ら2013)では，西南暖地の低標高地にお いて，冬季のィタリアンライグラスと夏季のパリセードグラ スを組み合わせて利用する周年放牧地を用いており.放牧肥 育期間中の導入から出荷までの飼養期間を通して放牧草の草 種や補助飼料が異なっていた。既報（中村ら2013)では報 告しなかった放牧肥育全期間を通じた放牧草の草量，栄養成 分および摂取量を明らかにすることで，放牧主体の肥育方法であったかどうかを明確にすることができ，さらに放牧草の 草量およぴ栄養成分含有率の季節変化に合わせた補助飼料の 設計が可能になる。m2k2@affrc.go.jp