種間交雑による芳香シクラメンの開発

摘要

シクラメンは年末を代表する鉢物として日本人の生酒に深く浸透している。 生産地は北海道から鹿児島県に及び，年間2180万鉢が生産されている。 現在，花屋の店頭で見かけるシクラメンはサクラソウ科，シクラメン属（20種）の中の1種Cyclamen persicum（トルコ，イスラエル原産）を改良したものである。 シクラメン属の中のC．persicumを含む全ての種は球根（塊茎）を形成するが，分球による栄養繁殖は行わず，種子で繁殖する。 C．persicumの野性種は二倍体（2n＝2Ⅹ＝48）で染色体数は48である。 野性種の花色は白、目，純白であるが，まれにピンク、目，紫、目なども鼠られる（シクラメンの花は，花弁の基部が泉　 または紫に着色する部分がある。 この部分を"目"と表現している。 純白と特殊な複色花を除けば，ほとhどの品種に"目"がある。 以後，特別な場合を除いて，この"目"という表現は省略する。 ）（第1図）。C．persicumの野生種は夏季に休眠し，生育が停滞するため播種後，開花するまでに2～3年かかる。 この野性種を栽培する過程で休眠しない系統が選抜され，播種後，約1年で開花するようになった。 また，花の大きい系統が選抜され，C. persicumの野生種にはない赤の花色を持つ品種も育成された。 最近では，複色花や淡い黄色の品種も育成されている。 栽培の過程で同質四倍体（2n＝4Ⅹ＝96，染色体数は96）が選抜された。 同質四倍体の中には花弁の嫁がフリルになったフリンジ咲の品種（ビクトリア，フラミンゴ），花弁全体が紫で花弁の嫁が白い品種（シルバーエッジ），ピンクの地色に濃いピンクの条線が入る品種（ハーレカイン）など，二倍体品種にはない特徴を持った品種がある2）。 二倍体（2n＝2Ⅹ＝48）と四倍体（2n＝4Ⅹ＝96）があるので，交配により三倍体（2nニ3Ⅹ＝72，この場合は同質三倍体）を育成して利用することが考えれるが，授精後に雑種胚が崩壊するために通常の交配では三倍体は得られない。胚珠培養により雑種胚を救済すれば三倍体は得られるが，現在のところ実用化していない。