火星での低圧栽培を目指しち宇宙鏖業

摘要

という唐突な問いに対して，火星のことを少し でも知る人は「無理」と答えるであろう。火星は寒い。また，火星表面の大気圧は平均0.7kPaであ り，地球表面の大気圧（lOlkPa)の1/100以下で あることから，火星表面では物理的に液体の水は 安定に存在せず地球のような田畑を作ることは不 可能である。火星で水をまいても，たちまち蒸発 するか，凍りついてしまう。前世紀後半にロケッ卜を手に入れた人類は瞬く 間に地球周辺の空間を制覇し，月にまでその足跡 を残すようになった。しかし，その次の夕一ゲッ 卜であったはずの火星への足取りは途端に重くな る。月までは米ソ冷戦の原動力が後押ししていた。 だが，片道4日ほどで行くことができる月と比べ， 火星は片道半年以上，往復することを考えたら2 年半以上の大旅行になる。火星はやはり遠いので ある。食料や帰りの燃料を地球から全て運ぼうと すると，巨大なロケットが必要となり実現性が薄 い。そこで，これらの負担軽減のために一つ考え られるのが，火星での食料自給を目指した宇宙農 業"である。火星上での宇宙農業は温室ドームの 中で行われると考えられるが，ドーム内外の差圧 をなるベく小さくすることが求められ，ドーム内 の圧力は低圧に保たれる。これはドーム内で栽培 される植物にも低圧耐性を求めることになり，植 物の低圧栽培技術の確立も重要な課題となる。