植物の根に関する諸問題〔197〕 一作物生産における理想型根系一

摘要

本稿では，作物生産との関連で，理想型根系につ いて考えてみたい.著者らは，理想型根系の考え方についてこれまで公表してきた（河野、山内1994， Taylor and Yamauchi 1991,山内2004).そこでここ では、主として著者らの研究成果を踏まえて，それ 以降進展したことと，ならびに今後の発展方向につ いて考察する. 理想型根系とは，機能面から根系を捉える考え方 で，あるアウトプットを最大化するように最適化された根系のことを指している（Taylor and Yamauchi 1991).そのアウトプットの例としては，乾物生産 量，収量，あるいは次世代のための種子生産量など がある.地上部の理想型草型の議論においては（秋 田1996),群落当たりの物質生産を最大化するため の光資源の獲得にとつて最適な形態，構造，という 考え方が基軸にあった.同様に，たとえば，資源（養 水分）の獲得を最適化する構造を有する根系が一つ の理想型根系ということになる.