食品の安全性とリスクアナリシス

摘要

健康に影響を及ぼす要因として，最も重要と考えられるのは食事であり，特に食事習慣や栄養，つまり何をどのように食べるかである．死因の上位にある，ガンや心臓病，脳卒中、脳梗塞の原因を考えると，その重要性は明らかである．また，その他の生活習慣や喫煙も重要な要因である．最近問題となっている食品の安全性は，これらに比べると健康への影響がはるかに小さい．しかしながら，食事習慣や栄養については，個々の国民に強制することはできず，政府や科学者のできることはせいぜい教育啓蒙であり，何をどのように食べるかは国民一人一人の責任であるのに対して，食品の安全性，とりわけ化学的安全性については，政府や生産者、製造者が安全を保証してくれれば，消費者は安心できるわけである（ただし，BSE罹患牛発見以降の種々の食品関連問題やスキャンダルにより，国民の政府や生産者、製造者に対する信頼は揺らいでいる）．