イギリスにおける農業人材育成の現状と展望 一農業教育機関の役割に着目して一

摘要

担い手の減少、高齢化が進む我が国農業にとって， 次世代の人材育成は喫緊の課題である.良質の若い 担い手を量的に育成していかなければならない一 方，従来の家族柽営内の親子間継承のみにそれを委 ねるには限界がある，という背景に鑑み，人材の供 給源を農業後継者以外にも広げ，その育成を教育制 度などに託し，就農に向けた障害を各種政策支援で 軽減することにより，良質な担い手の育成を図るこ とが求められている.このような人材育成の問題は，我が国に限ったも のではなく，先進国農業に共通して見られる.本論 では英国を事例に，特に農業教育機関の人材育成機 能の現状と展望について分析を行う.英国では，Policy Commission on the Future of Farming and Food[4]が，「人々が農業という産業を去るとき，それを 補充しようとする人々の存在が望まれ」，「近い将来，トレーニングを十分に受けた若い農業者が大量に必 要になる」と問題提起していること，労働力人口に 占める農業者の割合が先進諸国の中でも最低水準に あること，近年に高等教育改革と農学系学部の再編 が行われたことなどがその理由である.