畜産経営における社会的責任と生産情報公開

摘要

近年におけるBSE，鳥インフルエンザ，中国の餃子，産地偽装問題が消費者の食生活を脅かし，改めて現在における食の安全、安心をよりいっそう深刻なものにしてきている．近年の大量生産，大量消費を背景に企業は一般消費者に勝れた品質の商品をより安く提供することによって，自己利益の極大化を推進してきた．その反面，企業ほ市場における経済的効率性を過度に追求し，企業の社会的機能、社会的役割としての社会性を軽視するようになってきた．こうした状況の中で，反社会的行動への是正，企業の様々な不祥事や社会問題への対応に対する企業の社会的責任の在り方が広範に問われるようになってきた．社会的責任は単に不祥事や法令違反に対してその責任が問われるというレベルのものだけではなく，経済活動を行う主体としてステークホルダーに対する公的利益を考慮し，環境対策，雇用に対する問題，消費者に対する情報公開などについて，アカウンタビリティを果たしていく必要がある．その結果，企業ほ経済的、社会的、環境的パフォーマンスの向上を目指すことができる．こういったことほ一般企業ばかりでなく農業分野にも当てはまる．畜産経営においても，環境問題，雇用問題，消費者に対する情報開示等，社会的責任として果たす取り組みほ様々存在するが本稿においてほ畜産経営における食の安全、安心という観点から生産情報公表について着目する．