『「建築外」の思考一今和次郎論』

摘要

業績が時を超え，分野を越えてくり返し再発見され，時代に即した新しい解釈を与えられて生きつづける。 今和次郎はまぎれもなくそのような存在であり，独創的な世界を構築し得た数少ない知の巨人のひとりといえよう。 その今和次郎に，本書によってまたひとつ全く新しい角度から光が当てられた。著者は建築理論を専攻する気鋭の若手研究者であり，米国留学中に今の仕事に出会い，それを素材として比較文化的視点から日本の近代建築を論じる学位論文を書き上げた経歴をもつ。 本書はこうした背景から生まれた異色の今和次郎論である。 これまでともすれば独創的ではあっても特殊日本的なものとみなされてきた今和次郎の所論が，実は欧米の諸理論を深く学hで構築されたものだという著者の主張は，きわめて新鮮に響く。 本書によって，今の業績は初めて「世界」の文脈のなかに位置づけられたといってもよいだろう。