地形の持つ曲線要素を活かした棚田整備業法の導太可能性 －階層分析法（AHP）による景観要因に着目じた意思決定分折－

摘要

地形勾配1／20以上の傾斜地にある急傾斜地水田を意味する「棚田」は，周辺の風土と調和して美しい景観を呈しているものが多く，中山間地域における貴重な景観資源となっている。 しかし，こうした棚田を維持することは，傾斜による区画規模の制約，法面の保全管理等から作業効率を損なう劣悪な労働環境にあること等の理由から困難な状況にあり，耕作放棄等による農地の荒廃化が危倶されている。 棚田百選に選定され，名勝指定されている長野県千曲市の「嬢捨地区」でさえも，未整備地では耕作放棄地や荒廃地が増加している。 一方，耕作放棄の防止策として圃場整備が効果的であり，棚田の持つ多面的機能の発揮にも役立っていると報告されているが，直線基調の区画形状で整備すると，画一的で単調な景観に改変され，従前の棚田景観が大きく変容してしまう懸念がある。また，急傾斜地での圃場整備は，土工量や施工費の増大を招くことも想定される。