犬井正著『里山と人の履歴』

摘要

本書は, 筆者の数十年にわたる日本国内外の里山における実地研究にもとづき, 「自然と人間の持続的なかかわりはどうあるべきか」を, 里山と人の履歴を記述することにより深ろうとする, 実に意欲的な著作である。 「里山地域で息づいた二次林文化を再考することによって,そこから現在の生活に活かせる原理を獲得し, 里山保全の方策を探り出す。 」 これが本書の意図するものである。筆者によれば, 「二次林文化」とは, 人が二次林を中心とする里山にかかわる過程において, 人々の間に確立された循環的 - 永 A的 - 省 Y源的な考え方や生活様式, を意味する。 里山保全への認識こそは高まってきたが, こうした二次林文化が本質的に理解されていないがために, その保全方策については一時的かつ表面的なものに終始している場合が少なくない。こうした事態に警鐘を鳴らすべく, 本書は, 里山とそれを支えてきた人と自然のかかわり合いの履歴や構造に目を向け, 「持続的な人と自然のかかわり」とはいかなるものなのかを説いている。